病気なの?いくつまで大丈夫?おねしょと夜尿症の違い
眠っているあいだに尿がもれてしまうことを一般に「おねしょ」と言います。
ただ、医療においては、生後1歳~5歳くらいまでに起こるものを「おねしょ」と呼び、6歳以上で起こるものを「夜尿症」と呼ぶことで区別しています。
これは、本来であれば排尿器官が発達してきて5歳くらいには夜間の尿漏れが起こりにくくなるために、それ以降のものを病的な原因を疑って対応するための区別です。6歳以上の夜間の尿漏れもほとんどは病気以外のことが原因ではありますが、より慎重な診断が求められます。
反対に、5歳以下だから病的ではないとは限りませんので、おねしょ、夜尿症が気になるときには、お気軽に当院にご相談ください。
おねしょ(夜尿症)の原因
おねしょの原因
ほとんどは、排尿器官の発達が不十分であることで起こります。通常、5歳くらいには、排尿器官が発達しておねしょが起こりにくくなります。
夜尿症の原因
膀胱に溜められる尿量が少ない、夜間に膀胱に溜まる尿量が多い、睡眠障害、ストレスといった原因が考えられます。
夜尿症の検査と診断
問診
夜間の尿漏れ(おねしょ・夜尿症)の頻度、どのようなときに起こるか、日中のお漏らしがあるか、尿漏れ時の親御様のご対応などについて、お伺いします。
診断と治療方針の決定において非常に重要な判断材料となりますので、些細なことでも医師にお伝えください。
尿検査
感染症などの有無を調べます。
超音波検査
腎臓、膀胱の異常の有無を調べます。
(当院では実施しておりません。必要な場合は専門機関へご紹介いたします。)
おねしょの対策・治し方
5歳くらいまでは、排尿器官が未発達であるため、お子様にとっておねしょは「どうしようもないこと」です。
もし5歳以上の年齢になっておねしょをしてしまっても、叱ったり責めたりすることは逆効果となってしまうので、一緒に改善していくよう寄り添ってあげましょう。
失敗しても叱らない
おしっこを漏らしてしまったとき、決して叱ったり、兄弟姉妹と比べたりしないようにしましょう。
また、寝具の洗濯などの手間が生じますが、残念そうな顔をしたりするのも避けましょう。
反対に、おねしょ・夜尿症がなかった日に褒めてあげるのが効果的です。
家族の生活リズムを整える
「〇時に寝る・起きる」と“子どもルール”を作っていても、ご家族が夜更かしをしたりすると、どうしてもそれに引きずられてしまいます。できる限り、家族が同じ生活リズムを刻むようにしましょう。
夕方以降は水分を摂りすぎない
夕方以降は、がぶ飲みは避けさせましょう。特に就寝前の3時間に多量の水分を摂ると、夜間の尿漏れが起こりやすくなります。
牛乳には尿量を増やす作用があるため、できるだけ日中に摂るようにしましょう。
晩ご飯を早めに済ませる
食事にも水分が含まれています。また、食事のときに飲み物を一緒に飲むというご家庭も多いでしょう。晩ご飯は早めに済ませ、就寝前に水分を摂りすぎないようにしましょう。
塩分・糖分の摂取を控える
塩分や糖分をとると、飲み物が欲しくなります。お菓子などを食べ過ぎないようにしましょう。
おやつは夕食後ではなく、三時のおやつで摂るようにしてください。
夜尿症の治療方法
生活指導と行動療法を3~6カ月ほど継続し、改善が見られない場合には、専門病院へ紹介し、積極的治療としてアラーム療法や薬物療法を導入します。
生活指導
早寝早起き、規則正しい生活を送ります。夕食を早めに済ませる、就寝前の水分の摂取を控えるといったことも大切です。また、寝る前にトイレに行く習慣を身につけましょう。
失敗したときの親御様の対応についても、アドバイスをいたします。
行動療法
行動療法とは、これまでの不適切な反応を修正し、新しく適切な反応を習得する療法です。
小学校にあがるくらいまでのお子様であれば、失敗しなかった日にしっかりと褒める、という行動療法が有効です。
失敗したときに叱る、ご褒美を没収するといった方法は逆効果となりますので、ご注意ください。
積極的治療
アラーム療法
「おねしょアラーム」を使った治療です。センサーを下着にセットすると、尿を検知したときにアラームが鳴ります。最初はなかなか自分では起きられませんので、親御様が起こし、残りのおしっこをトイレで出させることになります。繰り返していくことで、次第に自分で目を覚ましてトイレに行くようになります。
アラーム療法は、おおよそ3分の2のお子様に効果があると言われています。ただし、その治療の特性から、お子様ご本人の「夜尿症・おねしょを治したい」という気持ち、親御様の協力があることが前提となります。
なおおねしょアラームは、家電量販店や通販サイトなどで2,000~5,000円くらいで購入できます。
薬物治療
6歳以上のお子様の場合は、就寝前に内服する「デスモプシレン」というお薬が有効です。夜間に体内で分泌されるはずの抗利尿ホルモンが補われ、尿漏れが起こりにくくなります。
効果があるのは約半数の症例であること、服用をやめると元に戻ってしまうことが多い治療ですが、お子様が自信を取り戻すきっかけにすることが可能です。また、この薬が有効な場合には、修学旅行やお泊り会など、お子様が特に失敗を恐れる日に使用することをおすすめします。
ここまでにご紹介した治療法で効果がないという場合には、過活動膀胱に対する治療薬として「抗コリン薬」を使用することもあります。ただし、他の治療法と比べると十分なエビデンスが確認されていません。
受診の目安
5歳くらいまでのおねしょは、ほとんどが排尿器官の未発達によるものです。そのため、過度に心配する必要はありません。
受診の目安は、6歳になっても毎晩のように尿漏れがあるというようなケースです。ただし、ひどくお子様が気にしている・親御様が気になるという場合には、年齢に関係なく、当院にご相談ください。