子どもの体重が増えない…体重増加不良
近年、運動不足などによる子どもの肥満が問題になっています。こういった場合には、食生活の見直しや運動習慣の獲得など、比較的明確な対策が講じられます。
一方で、子どもの体重が増えないという場合も、親御様はご不安になることと思います。身長が伸びずに体重が増えないというケースもあれば、身長が伸びているのに体重が増えない(痩せていっている)というケース、たくさん食べているのに体重が増えないというケースもあります。
ほとんどは病的なものではありませんが、中には病気を原因としてこのような体重増加不良が起こっていることもあります。
子どもの成長段階
乳幼児期
乳幼児期は、生後から1歳未満の期間を指します。
新生児の平均体重には男女差がほぼなく、どちらも約2.9~3kgです。その後、一般には男の子の方がやや早く体重増加が進みます。1歳頃には男の子が約9kg、女の子が約8.5kgに達します。
小児期
小児期も男の子の方がやや平均体重が重い期間が続きます。
5歳時点での平均体重は男の子で17.7kg、女の子で17.4kgとなります。
思春期
思春期とは、おおよそ8~18歳くらいの時期を指します。
これまで男の子の方が重い傾向にありましたが、10~11歳くらいでこれが逆転します。12歳時点の平均体重は男の子が42.4kgであるのに対し、女の子は42.6kgとなります。
ただ、またすぐに逆転が起こり、その後は男の子の方が平均体重が重い状態が続きます。15歳時点では、男の子が57.6kgであるのに対し、女の子は52.6kgに留まります。
体重増加不良の基準は?
一般には、身長や体重のバランスを見る「身長体重曲線」を用いて、痩せている(あるいは太っている)を判定します。特に1歳未満の乳幼児の場合には、健診のたびに身長と体重を測定し、発育が安定しているかどうかを確認します。
しかし当然ですが、ある子どものある時期の身長・体重だけを見て「体重増加不良」と判断することはできません。お一人おひとりの経時的変化を考慮し、体重増加不良であるかどうかを判断します。
体重増加不良の原因は栄養不足?病気?
体重増加不良の原因としては、主に以下のようなものが挙げられます。
摂取するエネルギーが少ないケース
母乳・ミルク、食事の量が少なければ、摂取エネルギーを消費エネルギーが上回り、体重が増えにくくなります。
背景に口唇口蓋裂や巨舌、小顎症、喉頭軟化症、先天性心疾患といった病気があったり、親の精神疾患・ネグレクト・虐待が原因になることもあります。
摂取したエネルギーを吸収できないケース
逆流性食道炎、消化管狭窄、食道裂孔ヘルニア、代謝疾患、神経疾患などによって、口から摂取した食べ物からエネルギーを十分に吸収できないケースです。
アレルギーや下痢、乳糖不耐症、栄養吸収障害が原因になることもあります。
代謝の異常や亢進が起きているケース
先天性代謝異常症、内分泌疾患などが原因となり、栄養素が正常に合成・分解されないことがあります。
体重増加不良の検査と診断
問診では、発育歴や食生活、排便・排尿の現状、兄弟姉妹の健康状態などを詳しくお伺いします。
その上で、身長や体重、頭囲・胸囲、血圧、脈拍などの測定などを行い、診断します。
また必要に応じて、血液検査、便検査、尿検査、レントゲン検査などを追加します。
体重増加不良の治療
体重増加不良の程度によって、治療法が異なります。器質的疾患が見つかった場合には、その治療を行います。
また、家庭環境や経済的・社会的背景が問題になっている場合には、カウンセリングが必要になることもあります。
軽度~中等度の場合
授乳や食事を見直し、高カロリー摂取を図ります。高たんぱく食、高濃度のミルクなどを使用することもあります。
重度の場合
重度の場合には、入院した上で医師・管理栄養士などによる食事療法を行います。
精神科・心療内科との連携が必要になることもあります。
子どもの体重増加不良(やせ)を解消するためにできること
子どもの体重増加不良を解消し、健やかな身体の発達を促すためには、睡眠、食事、運動が大切になります。
睡眠時間をしっかりとる
成長ホルモンは、夜間の睡眠中に多く分泌されます。遅くまで起きていたり、睡眠時間が不足したりすると、身体の発育を妨げる原因になります。
個人差はありますが、一般には幼児で11~12時間、小学生で10時間ほど睡眠をとるのが理想と言われています。
食事は三食バランスよく
食事も、身体の成長に欠かせません。できるだけ同じ時間に、毎日三食をしっかり摂りましょう。タンパク質、脂質、炭水化物にビタミンとミネラルを加えた「五大栄養素」をバランスよく摂取します。
間食をする場合も、できるだけ決まった時間(3時のおやつなど)に与えるようにしましょう。就寝前の飲食は、成長ホルモンの分泌を妨げることがあるため、控えます。
運動で食欲・睡眠の質を上げる
運動は、骨に刺激を与えその成長を促します。
またエネルギーを消費することで食事量が増えたり、適度な疲労感によって睡眠の質が改善したりといった二次的な効果も期待できます。
必ずしも習い事などでスポーツをさせる必要はありません。外遊びで十分な運動ができます。